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美容効果モニタリング技術

CosmeTech

美容効果モニタリング技術

歯のホワイトニング効果評価用スマホアプリの開発

「この製品を使って本当に歯が白くなる?」
「何回使えばどのぐらい歯が白くなる?」
「もっと高価格の製品だとより歯が白くなる?」

以上は、我々消費者のが歯のホワイトニング製品を選ぶ際に考える代表的なことだと思います。
インターネット上には製品の口コミ・レビューがあふれていますが、上記の疑問への「答え」となる情報には滅多に辿り着けません。

では、その「答え」とは何でしょうか?
そのひとつが,ホワイトニング製品の使用前後の歯の色の変化を確認できる画像です。

本研究では、消費者が自宅で簡便にホワイトニング製品の効果を評価するための歯の画像を自撮りできるスマートフォンカメラアプリを開発しました。

ホワイトニング製品の効果、すなわち歯の色の変化を画像で捉えるためには、
歯の色に影響を与える以下の2つの撮影条件、

環境光やカメラのフラッシュで決まる①照明条件

カメラと歯の位置関係ならびに口の開け方で定まる②歯の見え方条件

撮影毎に揃える必要があります。

アプリは、①照明条件を揃えるために、日光や室内灯の影響がない暗闇(0ルックス)の使用を前提としています。
加えて、環境光の明るさに応じてスマートフォンディスプレイが明るさを調整する (ディスプレイが暗い場所では暗く、明るい場所では明るく変化する) 機能を利用して、ディスプレイの明るさから周囲が暗闇(0ルックス)となっているか確認するための環境光センサー機能がアプリに組み込まれています。

またアプリでは、②歯の見え方条件を揃えるために、顔画像中の目,鼻,唇などの顔パーツを推定するAI技術であるFacial Landmark Detection(FLD)技術を利用しています(図1b)。
ここでは、ホワイトニング製品使用前に撮影した画像のカメラと歯の位置関係ならびに口の開け方(図1f)をFLDで解析し、記録しています。
ホワイトニング製品使用後の撮影では、撮影した画像の②歯の見え方条件が使用前の画像と同じかどうかを判定し、同じ場合のみ画像の保存を許可します。
具体的には、ホワイトニング前の画像の唇内側の六角形の重心位置GH0(図1f)とその面積AH0を記録し、ホワイトニング後の六角形の重心位置が、ホワイトニング前の六角形を包む最小の四角形の内側(図1g)に収まっている、かつ、ホワイトニング後の六角形の面積が0.7×AH0~1.3×AH0の範囲に収まっている場合にのみ保存が許可されます。

これに加えて,アプリを用いて自撮りを行う際には、使用前の画像がディスプレイに半透明(図1d)で表示され、アプリユーザーが②歯の見え方を合わせる作業を補助します(動画1:アプリによりホワイトニング後の画像を撮影する様子。ホワイトニング前の半透明画像が表示され、ユーザーはそれを見ながら位置合わせを行います。)。

図1. アプリで用いられる代表的な画像。

 

アプリを使用し、ホワイトニング製品を使用した前後の歯の色の変化を捉える画像を撮影することができるか評価した結果を図2に示します。

実験では、インスタントコーヒー粉とグレープジュースを用いた模擬的な着色を歯に行った後に、ホワイトニング処置を行い、各段階で5枚ずつ画像を撮影しました(図2a)。

歯の色の変化は色情報であるL値(白味-黒味)、a値(赤味-緑味)、b値(黄味-青味)の3つの用いた色の距離、式差(√(L-L)2+(a-a)2 +(b-b)2)という指標で表されます(図2b)。

アプリで撮影した画像を用いて歯の色差を計測したところ、ホワイトニング後とコーヒー染色後には1.9,グレープジュース染色後には2.5の色差があり,ホワイトニング処理の効果を測定できることが示されました。

また、計測可能な最小の色差は1.3であり,これが初期状態とコーヒー染色後の色差であったことから、
アプリで撮影した画像を用いて歯の着色具合も監視できることがわかりました(図2a, )。
これは、アプリを用いることでホワイトニング処置を行うべき(= 歯が汚れた)タイミングを知ることができることを示します。

以前の研究では、1.9以下の色差は人間の目で違いを判別することが難しいと報告されており、開発したアプリを用いて、目で捉えることが困難な歯の色の変化を捉えられることが明らかとなりました。

図2. ホワイトニング効果の評価結果。

 

歯の色測定は、専門用語でTooth Shade Determinationと呼ばれ、歯の失った箇所を人工物で補う治療を行う際に、残っている歯と人工物を同色にするための調整時に高精度かつ高価な装置を用いて行われています。
本グループでは、開発したアプリを用いて、自宅で簡便に行うことができるパーソナライズされた歯の色測定方法をpersonalized Tooth Shade Determination法と呼び、その略語から、pTShaDe(パーティシェード)法と名付けています。

pTShaDeアプリの実用化が、製品使用前後の歯の画像、すなわち科学的根拠に基づく消費者のホワイトニング製品の選択を支援することを目指して、現在もアプリの改良を進めています。

本研究の成果は、国際学術雑誌 Diagnosticsに公開されています。
https://www.mdpi.com/2075-4418/13/11/1969

あとがき

本研究では、スマートフォンの自撮りにこだわってアプリ開発をすすめました。これは、スマートフォンが一般に広く普及していること、またアプリユーザーが誰にも頼らず撮影できることが必要であると考えたためです。
私自身、自分の歯の撮影を他人に頼むのは照れくさいからです。なにせ歯の色は、大切な個人情報でもあります。

アプリでは、顔パーツ推定AI技術を利用することで、歯とカメラの位置を固定する特別な器具も不要となっており、スマートフォンだけで歯の色の変化を捉えるための画像が撮影できます。
私自身、顔に器具を装着するのも面倒だし、やっぱり照れくさいからです。

もう一点、アプリの使用条件である暗闇がより他人からユーザーを見つけづらくしており、結果として私に似た、照れくさい方へ向けたアプリとなっております。

pTShaDe論文責任著者・金田 祥平